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頬を鰒の様に膨らませている雷鳴だが、そもそも物乞いに勘付かれたのは彼が、
『和人!、捕まえるなら恐怖で震える位びびらせてから殺しましょう!♪』
と、目を輝かせてその直後
『あー~!!指名手配中の物乞い野郎だぁ!!』
などと大声で叫び、付かず離れずの距離を保ちながら追った結果、
丑三つ時を越えてしまった訳なのだが…
「雷鳴優長!!、鶺さん!!」
不意に自分達を呼ぶ聞き慣れた声が聞こえた。
他数名の足音が近付いてくる気配と提灯の灯が視界に入る。
「藤堂さん…」
「おー!、藤堂君ッお勤めご苦労様です♪」
颯爽と目の前に数名の男達が駆けて来た、その内最初に自分達を呼んだ歳の若い紅顔美青年が切羽詰まった様子で喋り出す。
「‘お勤めご苦労様です’じゃないですよ、雷鳴さん!!お二人の帰りが余りにも遅いから脱走、又は何かあったんではないかと屯所内で大騒ぎです!!…まあ、事情はだいたい察知出来ましたけどね…」
ちらりと足下に転がる死体を一瞥したかと思えば、直ぐに真剣な表情となり告げた。
「雷鳴優長、鶺さん、屯所へお戻り下さい。…副長がお待ちです…」
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