はぐれモノ語

目覚めの朝、賢者の話

体を起こし、枕元に置いてあるジュラルミンケースを開ける。

―――どうやら中身は無事なようだ。

盗難窃盗に備えてこのケースを開けるには十一桁の暗証番号を必要としている。

素早く五を十一回連打する。

電子音と共にジュラルミンケースが開錠される。
中からいくつか物を取り出しスーツの各所にしまう。
窓を開け、ジュラルミンケース右手に適当に荒らした部屋を後にする。

―――今までの人生、人に恨まれることをしたことが無いと言えば嘘になる。
しかし俺が今置かれている状況は恨みや妬み云々次第でどうにかなるような問題だ。

花瓶の底や絵画の裏など屋敷の各所に設置した盗聴器を回収しながら自分が置かれている現状を再確認していく。