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―――十二月二十四日。
世間ではクリスマスイブと呼ばれる今日、漏れたちはクリスマスパーティーをしようなどと子どもっぽい思いつきをし、急遽集まることとなった。
の、だが。
この寒波の中わざわざ出てきてくれたのは、ここにいる五人だけだった。
薄情な人達だ、なんて思ったりもしたが、この寒波の中では仕方のないところである。
むしろこの寒波の中を漏れの祖父母宅まで歩いてきてくれた五人に感謝すべきだろう。
「……」
外気は氷点下、とまで言われている中、雪遊びなどする三人に感心する。
もっとも、峻君は無理矢理連れ出されたようなのだが。
「博行、もうちょっとこたつの温度上げてくれ……」
「りょ、了解」
マフラー越しにくぐもっている洸哉の言葉に従って、またこたつのつまみを回す。そろそろ限界が近い。
「あー寒い……何でこんな寒いんだよ……」
「それは言っても仕方のないことじゃないかな」
洸哉の言葉に、深君のいつもの正論。
「分かってるよそんなことは……」
「……」
日常のはずの光景も、心なしか活気がない。
最早クリスマスパーティーなどとは言っていられない雰囲気だ。
いっそ我慢大会に行事を変更すれば少しは盛り上がるのではないだろうか。
「はうー……」
と、そんなことを考えた時、峻君が這うように戻ってきて、奇妙な声を上げながらこたつに潜った。
「しゅ、峻君?大丈夫?」
思わずこたつの中に顔を入れてそう訊ねる。
「もうダメですー……」
峻君は目を渦巻きにして、もう泣き出す寸前の表情だった。
見ると顔や首元が濡れている。
散々あの二人に雪玉を投げつけられたらしい。
この氷点下の中、さぞ冷たかっただろう。
寒波に負けていた自分を思い出し、自責の念が激しく胸に渦巻いた。
「おーい峻!逃げんなよー!」
「もっと遊ぼうぜー!」
そこに庭から聞こえてきたのは、下賎なる者共のしゃがれた声色。
漏れは今度こそ寒波に負けるまいと、ふうっと息を一つ吐いてこたつから出た。
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