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就職してからはオフィスでの仕事が積み重なり、外に出る事はほとんど無かった。
デスクの上に積み重なった書類に溜息が出そうだ。
気晴らしに外へ出てみると微かに聞こえていた油蝉の声がいっそう強くなった。
ふと、昔の事を思い出した。
夏、今でもあの頃の事は鮮明に覚えている。
外、耳が痛くなるほどの声がする。
教室の中では生徒の談笑が耐えなかった。
「今日も暑いね、俺あと3日だよ」 「そろそろ良い子いないのかなぁ」 「外、眩しいなおい!」
「俺なんかあと4日!マズイよ!!」 「ちょっと行ってくる」 「あ、待ってよ」「ねぇ君いつ出てきたの」
(皆忙しそうだなぁ。)
クラスの窓際で柏木悠太は溜息を付いた。
中学校生活1年目の夏、僕は見事に友人関係作りに失敗した。
だからと言って嫌われているわけではなく、ただ仲の良い友達が居ないだけだった。
『おい・・・、聞いてる?』 (何でコイツ反応しねぇんだ?)
「ん・・・あぁ、ごめん。何?」
『いや、ほら、プリント』(何か気持ちわるいな・・・)
何時の間にか休み時間は終わっていたようだ。
前の席のマエハラがプリントを後ろの僕の席に渡す時だった。
「あ、ごめん。」
『いや、何で謝るんだよ、まぁいいけど』 (何でコイツが俺の後ろの席なんだよ)
学校ではいつもこんな感じ。
休み時間は席で1人で過ごすか、図書室へ行くかだ。
仲の良い友達が居ないんだからこうやって過ごすしかない。
だが別に気にするほどではなかった。
放課後 教室
帰りのHRが終わり各々が鞄を持ってそれぞれの気の合う友達と帰っている時だ
担任の三田が近づいてくるのが見えた。
三田は今の1年が入学すると同時に教師に就いた新人教師だ。
年齢は24歳で数学担当、少し気持ちが悪い。
『柏木くん』(話しかけるの久しぶりかも)
「はい、なんですか?」
『最近クラスの皆と仲良くやれてそう?』(○○○といい、この子といい、何で孤立するの?)
「はい、全然大丈夫ですよ。」
『あら、そう?ならいいの、何かあったら先生に言ってね?』(面倒だなぁ、自殺とかしないといいけど)
「はい・・・」
悠太は自分の鞄を持ち、教室をあとにした。
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