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「おじさんの言うことはいつも適当だからな。月が三つになったら帰るって、どこまで信用していいのか分からないぜ」
「でも、僕はけいんのおじさんは好きだよ。陽気で面白い人だし、世界中を旅してるから面白いお土産を持ってきてくれるし」
「それもあんまり期待しない方がいいな。またきっとドコかに俺たちのお土産を忘れてるさ。おじさんはおっちょこちょいすぎる」
「こんばんは。子どもたち」
「さっきからうるさいな」
けいんは指で花をはじいた。
きゃ、と、可愛い声で花が鳴いた。
「ちょっとけいん」
「おい花。お前の名前はなんていうんだ?」
喋る花を見つけたら、とりあえず名前を聞いてみて、花の名前と自分が同じ名前だったらそれはひどく縁起がいい。
「私は名乗るほどの花ではありません。ただの通りすがりの雑草です」
僕たちは顔を見合わせた。
「通りすがりだって」
「今分かった。この花は妖精が植えたんじゃないな」
「どういうこと?」
「知らないのかよ。喋る花の性格は種を植えた奴の性格に似るんだぜ。こんなお調子者の花が咲くなんて妖精じゃあり得ない。きっと人間が植えたんだ」
「まさか」
「だってそうだろ」
「貴重な喋る花の種だよ。誰がなんのためにこんな道端に……」
「そこまで俺が知るかよ」
喋る花は、アオイお姉ちゃんの使っている香水とよく似た甘い匂いを微かに漂わせながら、澄んだ声で歌を唄い始めた。
ただ、歌声は綺麗なのに、音程がひどくずれていて、すごく音痴だ。
「……もう帰ろうぜ、あんじゅ」
「そうだね」
「あああ。ちょっと待って。子どもたち」
唄いながら花が言った。
「けいん。待ってって花が言ってる」
「なんだよ。俺は忙しいんだよ」
「子どもたち。どうか私を助けておくれ」
「けいん。花が僕たちに助けを求めてる」
「分かってるよ。俺にも聞こえてるって」
「子どもたち。早く私を助けておくれ」
そして花は、今度はしくしくと泣き始めた。
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