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私はスマホを取り出し母にメールしてみた。
『菫さんち、ご夫婦は最近亡くなって今その菫さんご夫婦の息子一人で喫茶店してる』
打ち終わるとシュガースティック2本とミルクと共にコーヒーが私の前に出された。
私がそれにお辞儀すると母からの返事がきた。
『えー?!でもそこの息子が良ければうちはいいわよ』
と、なんともアバウトな返事だ。
こんなアバウトな返事、今目の前にいる好青年にそのまま伝えるのも心証が悪そうだし、なんといってもイケメンと二人暮らしなんて美味しい状況、せっかくだから経験してみたい。
ということで私は適当ぶっこくことにした。
「あの、母が、信頼している菫さんの息子さんだから大丈夫、お願いしますと……」
「え」
「というか! 母今妊娠10か月で、再婚するので私居場所がないんです! 行くことないんです! ここに置いてくれたら、タダ働きでもなんでもします!」
適当ぶっこくつもりが、菫さんの息子さんの真面目な顔を見ていたら、結局情に訴える感じになってしまった。
だって他に方法が思いつかない。
「そっか。タダ働きなんてしなくて大丈夫だよ。上の部屋使っていいから。これからよろしく」
私はきた!救世主!という感じで笑顔になった。
「ありがとうございます!! 鈴木芳乃です! お世話になります!」
「はい。菫信長、30歳です。お願いします」
「へー、信長! えっ、で、30歳?! 見えない!」
「そう?」
「はい! 30ってもっとおっさんだと思ってました。全然見えないです!」
信長さんはハハッと嬉しそうに笑った。
こうして、二人の生活が始まったのだった。
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