芳乃の事情

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「終わりましたよーいかがですかー」  やっと縮毛矯正も終わり、会計をして外に出た。  スマホをみたら来た時間から二時間が経過していた。  軽く首を回し、住所を見ながら地図で予定地へ行く。  予定の場所は案外すぐ見つかった。  老夫婦がやっている喫茶店と聞いていたから、結構古い感じを想像していたが、爽やかなカントリー風なカフェという印象だった。  しばらく店から離れた場所で立って眺めていると、看板を出しに白いシャツに黒い長いカフェエプロンをつけた店員が出てきた。  え、バイトの人? 凄いかっこよくない? スタイルもいいし遠目から見てもなんかオーラが出てる。  老夫婦だけだと思ってたのにまさかあんな人もいるなんてどうしよう、ヤバい緊張しちゃう! でもこの先ずっとお世話になるんだったら今話しとかなきゃ!  と、いきごんで店に入って行こうとするイケメンさんの元へ近寄った。 「あの! すいません!」 「はい?」 「私、今日からお世話になります鈴木芳乃です!」 「……え?」  顔を上げたらイケメンさんが不思議そうな顔で私を見ている。  あ、この家の人から私が来るって聞いてないのかな? 「あ、こちら菫さんのお宅ですよね?」 「はい」 「ここの菫さんご夫婦と一緒に、住まわせてもらうことになってるんです」 「……えっ?!」 「菫さんご夫婦はいますか?」  イケメンさんはすまなさそうな顔をして口を開いた。 「私、ここの息子なんですが、父と母は先月と先々月に亡くなりました」 「えっ?!」  今度は私が驚いた。そんな、どうしよう。 「あ、いや、でもうちの母がこちらのご夫婦によく頼んだって言ってて……う、嘘なのかなぁ?」  「いえ、亡くなる前にきっと約束していたんでしょう。とりあえず中へどうぞ」  イケメンさん、もとい菫さんの息子さんに促されて店の中に入る。  しどろもどろになった私にイケメンさんがこんなに優しく対応してくれて嬉しい。
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