芳乃の事情

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「好きなところに座ってください。まだ改装オープンしたばかりで宣伝もしてないしお客さんこないと思いますから。あ、お昼まだですか?」 「あ、はい! まだです!」 「では好きなものなんでもおっしゃってください。メニューにないものでも」  私はカウンター席に座ってみた。  菫さんの息子さんはカウンターの中に入り手早くお水とおしぼりを出してくれた。  お辞儀して、テーブルにあるメニューを開くと、パンケーキという文字が一番最初に目に入ったのでそれにすることにした。 「じゃあこのバナナチョコパンケーキを」 「はい」  メニューを見ながらも菫さんの息子さんをチラチラ見ていると、カウンターの更に奥に入って行った。  そっちに厨房があるのか、もっとお顔をよく見ていたかったなーと思いつつもメニューを見ると、パンケーキの他にも、サンドイッチやフライドポテトなどがあり、これがザ・喫茶店メニューなのかぁと一人で頷いた。  ほどなくして菫さんの息子さんが出てきて、パンケーキの乗ったお皿を出してくれた。 「お待たせしました。バナナチョコパンケーキです」 「アリガトウゴザッス」  一連の身のこなしのスマートさにますますこの人イケメンすぎる……と惚けてたらカタコトみたい喋り方になってしまった。 「イタダキマッス」  カタコトが抜け切れずそのまま食べることにした。  おお、なかなかボリューミー。 「鈴木さんでしたっけ。うちの父と母、よくボランティアでいろんな人の手伝いをしてたから、その関係かな」 「ん、たぶん……」 「上の部屋あまってることはあまってるんだけど、今俺一人だから……鈴木さんは高校生?」 「はい。高校一年です」 「保護者の方に一応話してみてもらっていいかな?」 「ゴフ」  保護者と聞いて口に入れたパンケーキが変なところへ入り込みそうになった。 「あ、大丈夫? 飲み物も好きなもの頼んでいいよ」 「大丈夫れす。じゃあコーヒーを、砂糖多めで」  菫さんの息子さんはニコッと笑顔になるとすぐそばのコーヒーメーカーにカップをセットした。  笑顔、ステキ……。 「今、ちょっと聞いてみます」
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