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一話 秋風学園
五月晴れ。
この言葉がここまで合う日はそうないだろう。
昨日までの寒さはどこへやら、北海道とは思えない暑さに授業中とはいえ皆だらけきっていた。
ここは私立秋風学園(わたくしりつあきかぜがくえん)偏差値53の中堅高である。
「コリャッ!小久保ぉ!なーにワシの授業で寝とんねやぁバキャモンがっ」
中肉中背七三分けの生物教師、鏡吉雄(かがみよしお)の甲高い怒鳴り声が鳴り響く。
しかし怒られている筈の当の本人は動くどころか机に突っ伏したまま微動だにしない。
「小久保ぉ…なめてんのかそうか……テェェェェイ!!」
鏡は額に血管を浮かせ、いきなりサイドスローのピッチングフォームからチョークを投げつけた。
チョークは一瞬風切音を出したかと思うと、ライフル弾のようにジャイロ回転しながら小久保の頭頂部を直撃する。
「イテッ!ぐああああっっ」
鏡のチョークを食らった小久保は頭を抱えながら悶絶している。
いまどき他の学校であれば、いや他の教師であれば父母が乗り込んできて学校をクビになってもおかしくないだろう。
しかし、この鏡先生はPTAや教育委員会からの支持も熱く、生徒からかなり好かれている。
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