~一章~

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キーンコーンカーンコーン…… 小久保のうなり声を打ち消すように四時間目の終わりと昼休みの始まりを告げるチャイムが鳴り響く。 「まったく…小久保のせいで時間無駄にしてもうたやないかい。 まぁええわ、日直は挨拶はもういいから黒板けしといてくれ。 それじゃ、また明日。」 鏡は年の割りにフサフサとした白髪交じりの髪の毛を撫でながら教室を後にした。 すぐに教室は生徒達のしゃべり声でざわざわとにぎやかさを取り戻す。 「お前どれだけ爆睡してんだよ…」 右隣の席の石坂が呆れ顔で小久保に話しかける。 ぽっちゃりとした体系できつい天然パーマのかかった髪型の石坂はクラスのいじられ役である。 「いやちゃうねん!昨日いろいろあってん!」 ここが北海道であることを忘れるかのような小久保の関西弁はにぎやかな教室の中でもうるさいぐらいだ。 この学校は、学力は平均であるがスポーツの名門校であるため道外からも大量の生徒がやってくる。 むしろここ最近は野球、ラグビー、バレーボールで全国優勝を何度も経験しているため、道外の生徒のほうが多いくらいである。 そのため小久保の様に部活に入っていない生徒はとても珍しい。 「いろいろって、何があったの?」 「そら…まぁいろいろや!」 「お前低血圧だよね…すごいテンション高いなぁ…」 いつものことだが石坂は寝起きである小久保以上にテンションが低い。 「そらあんなドギツイ一撃食らったら嫌でもテンションあがってまうわ!」 「だから、寝てるお前が悪いんだって…」 「いろいろあったんやって!」 小久保は昨日の夜襲われた後に雑務などをこなしたせいで、ろくに寝ていないのである。 しかしもちろん石坂に真相を行ったところで精神科医を進められるだけだろう。 「はいはいいろいろねぇ」 『えー、1-5組小久保優希 すぐに科学実習室に来なさい』 石坂の声に被さって呼び出しの放送が入る。 「お前また呼び出しかよ…早く行けよ」 「すまねぇな。行ってくるわ。」 小久保は急いで教室を出た。
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