~一章~

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二話 化学実習室 真夏かと錯覚するほど熱い日が差し込む渡り廊下。 小久保は口笛でよくテレビできく昔のアイドルの曲を吹きながらのろのろ歩いていた。 どこからどうみても教師に呼び出しを食らった者には見えないだろう。 事実。本人も学業の成績に問題があったり、不祥事を起こしているわけではない。 しかし、化学教師の秋永忠良(あきやまただよし)には週に2~3回のペースで呼び出されているのいで石坂をはじめとするクラスメイトには謎に思われているうえ、実は小久保と秋永の二人は生徒と教師、性別、年齢の垣根を越えた男同士のアブナイ関係なのではとうわさにすらされたほどである。 もちろん事実ではないが、小久保の端整ないわゆるイケメンといわれる顔立ちがクラスの女子達の妄想を暴走させたというところだろうか。 そんな噂を知っているわけもない小久保は今日も化学実習室のドアを開けた。 「おお~おそいね…もう少しはやくこようよ~」 白衣を着た秋永は引きつり笑いを浮かべながら、ビーカーから試験管に得体の知らない黄色い液体を移していた。 「ええ~むっちゃいそいだって」 ニヤニヤとしながら小久保は上履きを脱ぎ実習机のうえに胡坐をかく。 「丸山も呼び出したのだけど…小久保はわからないよねぇ」 「しらんよ?あの人が遅いのはいつものことやんか」 「いやな、どうせ丸山のことだろ?午前の授業はサボると思うから昨日の帰りに連絡しておいたのになぁ。二時間目から来てるみたいなのに…」 秋山が白髪交じりの角刈りをなで上げていると、実習室のドアが開いた。
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