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まぁ2年・3年にしてもなぜ新学期に合わせて転入してこないのかは不思議だったんだけど。1年ならなおさら、なぜ入学に合わせなかったんだ。
今着ている制服は間違いなく、聖蘭学園高校の“高等部”の制服だ。わざわざせっかく入学したところから転入してくるのかが意味分からない。
驚いている柚流に構わず、青年改め朔谷は言葉を続ける。
「……あとなんとなくわかってると思うんですけど…俺、女性恐怖症なんです」
“あ~うん。なんとなくそれは分かった……”
これまでの言動と、校長の嫌がらせのおかげで身をもって体験できた。
「それも極度の女性恐怖症で、女性が近づいて来たり、見つめられると取り乱しちゃうんです。シルエットとかも苦手で……」
しゅん、と申し訳なさそうに目を伏せる。
「だからって言うのもなんなんですけど……先輩が本当に男だって調べてもいいですか?」
弱々しい目線の裏に、まだ信じきれない疑いの視線が混じっている。
視線を合わせようとするとすぐに誤魔化されるのがいい例だ。
あれだけ柚流が言い聞かせてたっていうのに。その建前が柚流の不満をさらに増加させていく。
「…………どういうこと?」
「いえ、だって先輩あまり大きい方でもないし、細いし、なんか声とか顔も結構中性的じゃないですか。もしかしたらズボンははいてるけど女の人なんじゃ…」
朔谷の言葉に柚流は眉をひそめる。
つまり……
朔谷が言いたいのは柚流が全然男らしくなくて、やっぱり女なんじゃないのか?
ってことだろう。
さっきの今で……。
ほんと、こいつは俺の話を聞いていたのか?
初めて会った人をそんなに信じられないものなのか。それとも俺がとても信じられるような人に見えなかったのか。
不満の文句ばかりが募っていく。
「ふざけんなよ。つか、胸ないだろ」
あからさまに不機嫌になった柚流に悪びれることなく、朔谷はグイグイと自分の質問を続けてきた。
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