朔谷くんがやってきた。

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<うわぁあ!? 女ぁ!!>  俺の方が情報を整理する暇もなく、ソイツは手元にあるものをなれかれ構わず俺に向かって投げつけだす。 「いっっ…ちょ、待て待て。…落ち着けって……うわっいった!? マジやめ…って、あぁっ!!!! それ昨日必死で整理した書類じゃぁん!!」  バサバサと俺の顔を打ったそれはヒラヒラと辺りに舞い散る。 「あ゙~」  数時間かけた努力が一瞬に、それも誰かも分からない奴に無駄にされてしまった。  そんなことを知るよしもないそいつは、まだ取り乱したまま部屋にあるものを投げつけてくる。  最悪だ……  昨日何時まで起きていたと思ってるんだ……  生気のない目線で散らばった書類を見つめ、絶望で鈍った思考にふつふつと怒りが浮かび上がってくる。  よくも…  その気持ちとともに、今自分の理不尽な格好に気が付き、さらに頭にくる。 「つーか……俺っ女じゃぁねぇえから!!!!!!」  柚流のとうてい女とは思えないものすごい形相に、青年が投げようとしていたリモコンがポロリと宙を舞う。 「え?」  意味が分からないという顔へ柚流は被っていたカツラを掴みとり、思いっきり投げつけてやった。 「ぶっ」  綺麗に顔面にヒットしたカツラは、ボトッと音を出して地面をうつ。同時に、バッチリと目が合った。  青年はまた目いっぱい目を見開いたまま固まり、ポツリと一言だけ声を漏らす。 「え……」 「よく見ろ! ズボンだって穿いてんだろうが!」  大声でそう文句をぶつけるが、周りの音が聞こえない状態なのか全く微動だにしない。  ただ、今度は取り乱したりはしなかった。  今の情報を整理しているような様子を見て、やっと校長が俺にカツラをかぶせることを指示したのか理解してきた。  つまり、俺が最初に考えていたことの真逆の事なのかもしれない。  まったくあの校長は……  でもまぁ…そうだよな……  あの校長がしてくることなんて、ただの嫌がらせなわけないですよね……  かなりの嫌がらせですよね。
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