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「あ゙ぁああ!」
「うわっ!?」
柚流が叫んだと同時に、朔谷の体が宙を舞う。
ドスンと鈍い音を立て、朔谷の背中が地面に落ちた。
すぐさま朔谷の身体をひっくり返し、右腕を掴みあげて、柚流は片膝で朔谷の背中を押さえつけた。
ほんの一瞬の出来事に朔谷はぽかんと口を開いて目を回している。
「えっ先輩? 今…つか、俺さっきまで…え? え?」
状況把握も出来ていないのか、訳の分からない縺れた言葉が朔谷から漏れる。
しかし、本当に訳が分からないのはこっちの方だ。
「お前……今、何しようとした?」
意識はしていたのに、自然と声が震えてしまう。
「せっかく自己紹介したんですから、名前呼んでくださいよ~。誠でいいですよ? 柚流先輩!」
嬉しそうにニッコリと振り向いた朔谷は、本当に爽やかなイケメンで……
ムカついた。
質問を無視され、さらにイライラの溜まった柚流は負けじとニッコリとした笑顔で「だまれ」と腕の掴んでいる力を強める。
「いだだっ…マジ痛ぃ、って…せんぱ…ほんと……いらいっギブギブ!!」
「今、な・に・を・しようとしてた?」
問答無用で力を緩めない柚流に、朔谷が涙目になって答える。
「なんすか~こんなの挨拶代りじゃないですか~」
「は? 男の胸舐めるのが挨拶と同じ? おまっ……朔谷くん頭おかしいんじゃないの?」
「誠でいいですよ~いっ、でででで!! すみません! 朔谷でいいです!」
少し緩めてやると、朔谷は涙を堪えながら改めて返答を返してきた。
うん。この表情はなかなか良いな。
「そんなことないですよ。むしろ柚流先輩の脳みそどうかなってるんですか?」
いやいやいや
いやいやいやいやいやいや
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