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「先輩?」
答えたのに、なかなか腕を離してくれない柚流に朔谷が不満そうに声を漏らす。
しかし、柚流の頭はその“答え”のおかげでさらに頭が混乱していた。
「…………」
うそだろ……
こいつ……またふざけてるんじゃないよな……
柚流は目を大きく見開いて朔谷を見下ろすが、まるで何も間違っていないと云う様なひょうひょうとした顔を見て、さらに訳が分からない。
思わずギューッと腕に力を入れると、朔谷が下でバタバタと暴れだした。
もちろん、そんなのお構いなしに力いっぱい押さえつける。
「ちょ!! なん!? …いたいって…! せんぱっ…ぃ…」
朔谷の言葉を軽く聞き流しながら、混乱した柚流の頭に一つの単語が浮き上がってくる。
≪―― ホモ ――≫
「ぇっ…………」
その瞬間、パッと掴んでいた朔谷の腕が手から零れ落ちた。
そして、柚流はやっと解放された腕を念入りにさすっている朔谷の上からゆっくりと起き上がり……数歩後ろに下がる。
まさかコイツ……
「マジ痛かったぁ……柚流先輩酷すぎますよ~。俺別に悪いことしてないのに」
そう思うと、さっきよりも何倍もこの言葉に説得力が出てくる。
いや…でも……じゃぁなんでここに転校なんかしてくるんだ……
「あっ! 柚流先輩もしかしてアレですか? もう自分の恋人にしかダメっていうタイプですか? つか綺麗な顔して男いないわけ無いですよね~。うわっ! じゃあ俺めっちゃ悪いことしたかも」
あちゃーと髪を掻き揚げ額に手を当てる。
その仕草さえイケメンで、普段ならムカつく所の柚流だがそれよりも……
お、男?
「おぃ……朔谷くん…お前……」
ココにいる理由なんて、この際どうでもいい。
我慢ならなくなった柚流は喉からボソボソと言葉を絞り出した。
「柚流先輩、なんか顔と声が一層怖いんですけど…やっぱ、けっこう怒ってますか?」
ふざけた朔谷の言葉は耳にも入れない。
「お前……もしかして……ほっ、ホモ……なのか?」
一番重要で、気になっていることを直球に聞いてみた。
「え……。…………。」
そんな質問されると思ってもいなかったのか、朔谷の身体が固まる。
朔谷くん。
そこは固まらないでくれ……
「……」
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