朔谷くんがやってきた。

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「大丈夫だ! 俺はそういうの全然気にしてない主義なんだ。さっきのも俺の寛大な心で受け入れるさ! でもちょっと距離を置きたいな。いやホントちょっとでいいんだ。俺はそういう差別とか大嫌いなんだぜ? そんなことするわけがない……」  異様なほど冷めた朔谷の目。  え?  なに?  俺今すごく良いこと言ったよね?  「せんぱーい。言葉と行動があってませんよー。だんだんドア側に後ずさってますよー……」  朔谷に指摘されるとピタリと柚流の動きが止まった。  ニッコリと微笑んでみると、さらに冷ややかな眼にじっとりと見つめられる。 「ははは」  無理だ。  だっていきなり襲ってくる相手だよ……  なんだよ受け入れるって…ビッチか俺は……  そんな俺の考えを見透かしてか、朔谷が思いがけない言葉を口にする。 「そんな警戒しなくても大丈夫ですよ~。そもそも俺、先輩みたいな凶暴な人、タイプじゃないですから」 「は?」  ケロリと言って見せた朔谷はそのまま胸ポケットから一枚の写真を取り出す。  フンワリとした焦げ茶色の髪の毛の下にふんわりと華やかに笑う男の子。  写真一面に映るその少年は全体がもう蕩けてしまうほど優しいオーラに包まれている。  なんというか…こう、一言でいうと可愛い。癒し系だ…  その写真を力強く握り閉め、グイグイと柚流に押し付けながら朔谷は叫ぶように声をあげた。 「そう! 俺はこういう優しくてふんわりした人がタイプなんです! 一緒に居て温かくなれて疲れを一瞬で癒してくれるような可愛い人。だから先輩みたいな何度も人を殴る人はタイプじゃないので安心してくださ…い゙ツツ!? ~ツツ!!」  あまりにも目を輝かせながら自分を語っていた朔谷に俺は迷わず拳を振り下ろした。  内容は内容で別にタイプじゃないのはどうでもいいんだか、朔谷に馬鹿にされているような気分になって…  なんか… 「なんかムカつく」
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