朔谷くんがやってきた。

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 カツラ被るのが衝撃的過ぎてすっかり頭の中から消えていたが、確かに言われていた。だけど、その内容もまた柚流の感にさわるものだったのだ。  だって、 <君の部屋に転校性を待たせているから、連れてきてくれないかい? 朝から一人だったから、できるだけ早く行ってあげてね>  ですよ?  部屋に待たせてるってことは、ソコの部屋まで連れてきてるってわけですよ。だったら最初から校長室に連れ行けって話じゃない?  それに、朝から居たって………  だったら今日すでに転校できただろう!   その時はその言葉を飲み込み、グッと耐えることしかできなかった。  今となっては、なんでこんな面倒なことをしたのか分かりますけど……  あの校長の悪癖は本当にメンドクサイな…  フッと息を吐いて、柚流は説明すると、ドア側を向く。 「あ~…えっと。まぁ俺は、これから朔谷くんを校長室に連れて行かなきゃいけないから、とりあえず着いてきて」 「えっ……。……嫌だ」 「早くいかないと校長に怒られるん………はぁ?」  なぜそこで断られる。  ドアを開けていた柚流がくるりと振り返り、朔谷を見ると、いつの間にか部屋の端っこまで移動している。  それも初めの時のように、顔を真っ青にさせて。  自然にこめかみに青筋が立つのを自分でも感じた。 「おい……」  柚流のあまりにも低い声にビクリと体を震わせた朔谷だが、朔谷も朔谷で目に涙を浮かべ絶対に離れたくない主張を叫ぶ。 「だって……俺ここに来るまでめちゃくちゃ女の人に会ったんですよ! 廊下の角を曲がってばったり出くわした時はマジ死ぬかと思いました。それを父さんに死ぬほど笑われるし、引っ張られてやっとここまでたどり着いたんです……」  なんとなくその状況が想像でき、柚流はまたフ~とため息を吐いた。  俺は思ったよりも面倒くさいものを押し付けられたみたいだ…  そして朔谷くんのお父さん。  あなたは絶対ドSだろう…
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