朔谷くんがやってきた。

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「いやぁそれが、ちょっと味見しようとしたのに、めちゃめちゃ殴られるんだもん。食べる処の話じゃないって。あっ! でもすごい肉付き良くてきれいな体で、絶対下の方とか俺好みなんだよね~。性格も俺好みだったら良かったんだけど!」  朔谷がヘヘっと少年のように笑って鼻頭をかく。 「まぁ、柚流君は好戦的なところがあるからね。でもお父さん的には、そういうじゃじゃ馬の方が楽しいと思うんだけどな。嫌がるのを無理やり押さえつけて、ジワジワ快楽で抵抗できなくさせていくのとか、イイと思わない?」  最後に怪しく微笑む校長は、いつも以上に生き生きとしていた。  チラリと目が合った気がして、柚流はさらに言葉を失ってしまう。 「俺は、父さんの趣味とは違うの! 甘く優しく愛し合うのが俺の流儀だから。無理やりが一興とかの父さんとは違うんだよ」  “全く、お父さんは分かってないな~”  プンッと少し拗ねたように腕を組む朔谷。校長はどこか違和感があるように首をかしげた。 「出会いがしらに好みの奴襲ったりする辺りは、俺の血を引いてないか?」 「…………。まぁ…初めてあった人なら少しくらい抵抗されるときもあるけど、キスまでして抵抗されたら俺はちゃんとやめるから。けじめはあるの!」 「それのどこにけじめがあるんだよ!?」  無理にでも否定した朔谷に、やっと柚流が言葉を吐き出す。 「柚流先輩!?」 「つーか、黙って聞いていれば……これはどういうことですか!? 校長せ・ん・せ・い!!」  無駄に広い校長室をズカズカと進み、柚流はバンッと嫌味ったらしく微笑む校長の机を叩いた。というより殴った。  なのに、全く気にしない校長は、逆に机を叩いた柚流の腕を掴み上げ、ギューと力を入れる。 「いツ」 「柚流君。学校のモノを壊したらそれは君の責任なんだけど……その責任取れるのかな?」 「本当に嫌味ですね。質問に答えてください」  この人は、俺が責任をとれないことくらいよくわかっている。  そんなこと、自分でも自覚している。だらか、そんな心配されることは嫌味以上なんでもない。
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