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「どうって……そうだね。一言で言うのなら、
明日から1か月、君は誠のものになる」
その言葉に、朔谷と柚流は眉をひそめる。
「そういえば誠にもあんまり詳しく言ってなかったっけ」
コクッと頷く朔谷を見て、“おや”と校長がわざとらしく首をかしげた。
朔谷とは違うその故意的な動作は、柚流を桁違いにイライラさせた。
「誠は、この学校に女性恐怖症を直すために連れてきた。あまりにも酷いからね。これじゃぁ学園を卒業した後、就職できないし…俺の面子を汚されるのも嫌だし。でも、誠がそれだけで共学に行くとはもともと思ってない……」
「俺も絶対反対だったよ? 今からでも帰りたいんだけど」
帰ってしまえ!
マジで帰ってしまえ!
叫び暴れる心の声を必死で押さえつける。同時に、生徒玄関で暴れ出した時、逃がしてやればよかったと心から思った。
いや、でも逃がしたらそれこそ校長に何されるかわかったもんじゃないな……
「だから、条件を出したんじゃないか。一か月で直せたら、後はまた学園生活に戻って良いって」
「違うじゃん! 条件は女性恐怖症を直さなかったら梓に酷いことするって脅してきたからだろ!!」
梓……?
話がすでに分からない。
梓って誰だよ……
「ああっ。そうだったね。というか、俺は男を犯すのは許しているけど、付き合うのは許してないからな? 分かってる? 付き合ってるっていう時点で、俺はその梓って子を誠から排除しようとしてるんだけど……まぁ見つけた時期がいいタイミングだったよね。誠が女性恐怖症を直せば、そんなことしないんだから」
全く笑顔は崩れなかった。
一方的過ぎて、まるで理由になっていないが……受け入れることしかできない。
それが自分の父親とでもなれば、その威圧はいっそう大きい。
あと、こんな父親は絶対イヤだ。
「お父さんなんて嫌いだ……」
おおっ
やっと朔谷と心底共感できることが見つかった。
しかし、柚流には話していることが通じず、訳が分からないが、悲痛なそのつぶやきが痛々しかった。
「嫌いでもいいけど、俺は誠のこと大好きだよ」
「……………」
嘘か誠か。
どちらにしても、一言で人の言動を封じ込めるこの男が、柚流も苦手だった。
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