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破いていいだろうか……
プルプルと、紙をもつ手が震える。
「ゆ、柚流…先輩…?」
恐る恐る名前を呼ぶのは、この紙に書かれていることが柚流をとても苛立たせていると理解しているからだろう。
あの校長……本当に頭沸いてるんじゃないの…
“ムカつく……”
ポツリと漏らした言葉に朔谷の身体がピクっと跳ねた。
手を繋ぐまでは、まだ……まだ…いいとして……そのあとのアレはなんだ……
「キスとかありえないだろ……」
「ですよね……女装しながらなんてほんとありえない……」
ガックリと肩を落とす柚流と同じように朔谷も肩を落とす。
「そこじゃないよ!」
「えっ…」
その驚いた朔谷の顔がさらに腹立つ。
「なんなのホント!? ばかなの!?」
「そんな~……」
ガーンと効果音が付きそうなほど落ち込む朔谷に見向きもせず、もう一度紙に目を向ける。
それにこのコメント…マジムカつく……
なにが<いっぽ近づける>だ…当たり前だろ。初日からこんなハイペースでいけるなら一週間で治るつーの。
だいたいカツラ被っただけで叫び出す奴なんだ。
こんなの俺たちを助けるためのノルマじゃなくて只の悪癖による意地悪だとしか思えない……
グシャッ
荒っぽく握りつぶすと、まだ下の方に何か書いてあるに気が付いた。
「P…S……?」
“ん? なんすか?”
朔谷も気が付いていなかったのか、もう一度広げた紙を上から覗きこむ。
PS:誠は柚流君の部屋と同室だよ☆
「…………は?」
「あっ」
訳が分からないと眉をひそめる柚流の顔に、思い出したように声を上げた。
「そういえば…柚流先輩が来る前に肉付きの良い人達がベッドとかいろいろ運んでたんですよ……」
「えっまじ……いや、でも俺の部屋そもそもベッド二つ入るほど大きくないよ……」
一人部屋で別館の一階を全て使っているといっても、思ったより館の幅が小さく、風呂場やらキッチン、ダイニングで結構幅が取られ、自分の部屋はあまり大きくないのだ。
ベッドと机があるだけでもう部屋のスペースはほとんど埋まっている。
どこに二つ目のベッドを置く場所があるっていうんだ。
ハー
嘘も大概にしないとマジで殴るぞ…
「二段ベッドが……」
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