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そう言おうとした柚流の言葉は、朔谷の言葉にはかなく砕け散った。
「…………」
確かに、ベッドの上には何もない……
「マジ?」
「……ちなみに、多分柚流先輩のベッドは代わりに持っていかれてましたよ…」
コクッと頷いた朔谷を見て、柚流は勢いよく椅子から立ち上がった。
ガタッ
足早にリビングを出て、玄関から一番近い部屋である自分の部屋に向かう。
バンッ
勢いよく開けると、見慣れた部屋はどこへいったのか。視界に映ったのは全く新しい部屋だった。
一つだった机は二つに、小さかったベッドはさらに小さめの二段ベッドに姿を変えている。
「ぅおおおおおおおおおいいいい!!!!」
叫ばずにはいられなかった。
狭い部屋がさらに狭い。
壁に備え付けの洋服掛けには、柚流の見たこともない服がかかっている。
そして、下のベッドに不自然に置かれた一つのダンボール。
信じられない……信じたくない……
「うわっ!? せんっま!」
後ろで朔谷の驚いた声を聞いたのはこれで二回目だ。
しかし、校長室を見たときとは全然違う声音に、「ハハッ」と思わず乾いた笑いが口から洩れた。
「あれ? なにあの不自然に置かれたダンボール……あからさますぎて笑える~」
本当に薄笑いしながら、朔谷は扉前で固まる柚流を押しのきダンボールの所まで近づく。
途中で二度ほど、転びそうになっていたのは見なかったことにしよう。
“ホント…この部屋狭すぎ…”
呟かれたその言葉は、柚流の神経を逆なでするだけだった。
悪かったなぁ狭くて……
こめかみに青筋を立てながらキッと睨みつけると、何かを感じ取ったのか背中を向ける朔谷がブルリと震えた。
まったく……学園ではどんな広い部屋使ってたんだか……
あの膨大な土地のことを考えると、相当なものなんじゃないかと少し気が引ける。
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