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「あ゙っ」
「どうした?」
ダンボールを開いたとたん聞こえた朔谷の異様な声に、柚流はやっと部屋に足を踏み入れる。
もう、こうなった以上どうにもならないよな……
俺がグチグチなんか言っても聞いてくれないんだし…
いいよ別にもう……
「うわっ」
ダンボールに入っていたのは、それはそれは可愛らしい女物の洋服である。
変な声を上げたと思えば…
「朔谷くんって女物を見るのもダメなの? そんなのもう直しようがないんじゃない?」
「さじ投げないでください……ちょっと嫌だなって思っただけです……」
普通は思わないんだよ……
ハー
深いため息が喉から這い上がった。
入っていた洋服を取り出してみると、白いワンピースが一着と、カジュアルな裾の短い服…とそれに合わせるTシャツ、短いスカートにこの学校の制服……女子生徒用…
それと、一枚紙が入っていた。
柚流は手に取ると、少し距離を取っている朔谷へ聞こえるように読み上げる。
「えーと……≪この洋服を着て、今日は誠と外食するように。できればワンピースがいいな。ちなみに写メよろしく≫……だって」
「無理無理無理無理」
視線を朔谷に移すと、朔谷はブンブンと激しく頭を振りながらそう繰り返している。
他人事みたいに読み上げたが、実際俺も嫌なんだよなぁ…
でも、そんな事も言ってられないしな……
それに、俺よりコイツの方が断然嫌だと思うし。
人は自分よりつらい状況の人を見ると安心するというのが、本当だったんだと柚流は心から感じた。
「まぁ、ワンピースとかスカートはまだ無理だと思うから、この服に下は俺のズボンでいいよな……あと写メは無視」
「先輩はそのままが一番綺麗だとおもいま…イテッ」
コツッと軽く殴ったのは、少し朔谷の境遇に同情したからだ。
「ふざけてると次は強くいくぞ?」
「………はぃ……」
つーか自分のためにならないだろう……
本気で直す気あるのか?
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