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「とりあえず、女の恰好しなきゃ始まらないよね……男の姿で話してても意味ないし」
そう言うと、おもむろに制服を脱ぎだす。
“女物ってちっちゃいよな~。ホントに俺入るのかな?”
言いながらワイシャツのボタンを外し、部屋の寒い気温に早く着替えようと脱ぎ捨てる。
思った以上に寒く、さっさと服を着ようとした時、柚流は自分をじっと見つめるものに気が付いた。
それは、目の奥がギラリと獰猛に光っていて、その視線に俺の身体が自然に強張る。
「なっ…なにじっと見てんだよ」
さっき本当に泣いていたのかと疑いたくなるほど鋭い視線は、本当に朔谷のものなんだろうか。
しかし、一度口を開いてしまえばまぎれもなく朔谷なのだと思い知らさせる。
「先輩マジ良い身体……細いのにいい感じに筋肉ついてるし…なんかやってました? 触って良いですか?」
「あほか!」
どさくさに紛れて変なこと言いやがって……
なんだって男の身体なんて触りたがるんだコイツは……
「もう朔谷くん部屋出て……」
コイツが普通の奴じゃないこと忘れてた……
俺は無理やり朔谷を部屋から押し出した。
―――――
―――
服は採寸したのかと思うくらいちょうどいい。
でも、着ることがきれたらできたで、柚流の気分はズーンと沈んでいた。
入った……
こんな小さい服が入るなんて……
しかも、どうやらカツラはリビングに投げたままみたいなんだ。
「ねー朔谷くーん、カツラ取ってー」
こんな姿を男の髪型のままでなんか誰にも見せたくない。
まぁこれもリハビリってことで……
「俺に女物のカツラに触れと!?」
「取って」
「嫌で」
「とって」
「……………」
小さく「はぃ」と言う声が聞こえてから数分立った後、やっとガチャリと扉が開く。
小さく開かれたドアの隙間から、まるでゴミを持つように摘ままれたカツラが投げ入れられた。
そんなに嫌か……
「ありがと……もうすぐ出るから、心の準備しといてよ?」
「えっ」
同時に、俺にも朔谷が暴れ出す心の準備が必要だよね。
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