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さすがに最初のように何も固定しないわけにはいかない。ネットが無かったから、鏡を見ながら軽く、落ちない程度にピンでとめる。
最後に少し混ざるようにほぐし整えた。
「まぁ…こんなもんだろ…」
いやぁでも……髪型違うだけですごい変わるもんなんだな……
女物を着ていても、さっきははっきりと柚流だと認識できた。なのに、カツラを被っただけで普通の女の子に見えてしまう。
確かに、自分で言うのもなんだけど最初朔谷くんに暴れられたのは分かる気がする……
鏡に映る柚流は自分で想像したよりもずっと女の子らしい。
「…………」
やっぱ脱ぎたいな……
やるせない気持ちを抑え付け、柚流は鏡から背を向けた。
朔谷くん絶対また叫ぶよね…
ハァ……
そして俺予想は見事(当然)的中した。
最後の最後まで、柚流が
『俺は男だからな。女装してるけど男だからな!』
と言い続けていたのに、朔谷が柚流を見た瞬間、酷い悲鳴がキーンと柚流の耳を貫いた。
「うあぁあああああああああああ!」
心の準備をしていても、朔谷の悲鳴は耳に優しくない。
「うっせええええええ!」
耳を塞いだ手は何の役割も発揮されず、柚流は負けじと大きな声で叫んだ。
「うッ……」
柚流の気迫に圧倒され、朔谷の言葉が詰まる。
「なにが
『もう柚流先輩のこと男だって分かってるんですよ、暴れるわけないじゃないですか(笑)』
…だ! ……全然だめじゃん!」
そうなんだ。
柚流が出る前に言い聞かせた言葉に対して、朔谷は全く心配なさそうにそう返し続けたんだ。
そしてこのザマ……
つーか、いつの間にリモコン手に持ってんだよ…また投げる気かよ……
「あのなぁ朔谷くん自分の状態くら」
「うあぁああ近づくなぁああ」
ブンッ
「うわッ…なにいきなりリモコン投げてんだ危ないだろバカ」
せめて投げる時に投げると言って欲しい。
血走った目で投げつけられたリモコンは、柚流の顔ギリギリを横切り壁に勢いよくぶつかった。
あぶね~
リモコンの角…アレは地味に痛い……
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