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「さく」
「しゃべるなあぁあああ」
お☆い
いつの間に俺は朔谷くんにしゃべる権利まで奪われたんだろう?
ふつふつと沸き上がる苛立ち。
でも……
もしかしたらこれは……朔谷なりに頑張っている結果なんじゃないだろうか…
ふと、頭の隅から浮き上がる。
ものを投げる量だって最初より少ない(気がする)…
そう思うと一括して怒るのも気が引けてくる。
朔谷だって自分から来たくて来たわけじゃない……
校長の悪癖によるものである以上、俺とあまり置かれている状況は変わらないじゃないか。
それに、ここに来たばかりの朔谷にとって縋る相手は今、俺だけしかいない。
校長は朔谷が一人で直すのが出来ないと判断したから俺に任せたんだ。
逆を言えば、俺が全力でサポートすれば直せると思ったからこそ、校長は俺だけに任せたんだよね……
なら、俺が手を貸さないでどうする……
あの校長は、意地悪な人だけど……無理難題を取引で使う人じゃない。
多分……
そう言う所だけは信用している。
朔谷のことを気にかけての行動でもあるし。
……今は……俺が耐えなきゃいけないんだよね…
自然と俯いた顔を振りあげ、しっかりと朔谷を見た。
「朔谷くん落ち着けっ、俺は男だ……柚流だ、分かるよね?」
半狂乱している朔谷を落ち着かせようと、まず男だということを理解させようとする。
しかし、朔谷は根本的に今の姿の柚流を元の柚流だと思うことが出来ず、混乱して目をグルグルさせている。
「しゃべ……すすすみませえ……無ぃ…うわあああああ」
「うぁっ」
何語を言ったのか……ソレすら理解できなかった。
ただ、朔谷の大きな叫び声は、いちいち心臓に悪い。
「いっ」
おまけに机に乗っかっていた箱ティッシュを投げつけられ、パコッと俺の頭を打った。
さっき朔谷くんの頭にあたったあれだ。
「絶対先輩じゃ…なぃ……女じゃん…………」
「……………。」
お☆い
う~ん、朔谷くん頭大丈夫かな?
お前と俺のほかにこの部屋入ってきた人なんていたのかな?
頭を打った箱ティッシュが地面に落ちた瞬間、俺の中の決意はガタガタと崩れ落ちた。
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