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「ふざけてんじゃねーぞ! この部屋には朔谷くんと俺しかいねーだろアホか!」
額に青筋を立てると、唾が出るほど言葉を吐き飛ばす。
「俺だって分かってますよ!」
「じゃなんで叫んでんの!?」
「分かってるけど無理なんです……当てはまらくて…もう先輩じゃない人みたいに見え…い゛!?」
確かに柚流の声は聞こえるのに、どうしても同一人物だと一致できない。
そんな混乱している朔谷の頭を、柚流は思い切りグーで殴った。
朔谷くんにはやっぱり言葉よりもこっち(暴力)の方が向いているのかもしれない。
「どうだー? 俺だって理解できたか? それとももう一発必要か? 必要なだけ言えよー…先輩が願いをかなえてやろう」
ニッコリと笑って見せた。
「ッッ、……………」
少し乱暴だったかな……
いつになく悶絶する朔谷を見て少し心配になったが、とりあえず静まった様子にホッと息を吐く。
「…ホントに柚流先輩でしたか……」
意外と落ち着いた朔谷の声音。
思ったより効果的じゃん……
でもこの基準で俺だと理解されるのもどうかと思う……
「最初から俺だって言ってたじゃん……朔谷くんホントひどーい」
コクコク頷いて、蔑んだ眼で見てやると、いたたまれなくなった朔谷がもごもごと口を動かし始めた。
「……っ柚流先輩も酷い…す……こんなの絶対女の子…だって………」
「……………」
聞き捨てならないな……
「ちょっ…無言で近づかないでください……マジ無理無理無理無理」
言いながら部屋の隅へ後ずさる朔谷。
しかし、後ろに壁がある以上、ジワジワと柚流との距離は詰められていく。
「そんな拒否らないでよー。傷つくんだよ? とりあえず、外食するにはまず俺の姿くらいは慣れてもらわないと困るんだよね~」
「無理っす!」
「ハハハハハ……無理とかの問題じゃないからね」
今になって、明日からのことを考えると、柚流は結局このノルマを超えないといけないことがヒシヒシ感じてきた。
このままだと初日で女性恐怖症がばれる。
あながち、全部が悪癖なわけじゃないのか……
まぁ、抱きしめる、キスをするは除外ですよ。
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