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その後、朔谷くんが叫ばずに俺(女装姿)を見られるくらいになるまで、心を鬼にして特訓をした。
結果……
夜九時を超えた。
“外真っ暗だ……”
ふと見た窓の外は真っ暗で、柚流の疲れた頭はただ呆然となった。
しかし、こんな時間でも校長命令である以上外食しないわけにもいかない。
“今の時間やってる店で近い所ってどこだ……?”
全く外食をしない柚流にとって、ここ周辺の立地については全くの無知だった。
そもそもお金ないし……時間もないし……
「あっ俺いい店知ってますよ? 今の時間とかヨユーでやってますし、ここから近いですよ!」
自信満々に言う朔谷。
そう言えば、朔谷の通ってた聖蘭学園ってここの近くだったっけ。
それに、近いも近い、この学校から5キロも離れていないところにあるんだ。
ここからでもあの森林(聖蘭学園)はよーく見える。
聖蘭高校は全寮制。夜遅くに抜け出すっていうのも筋が通る。
出ていいのかは知らないけど……
さすがに全寮制ってなると外に出たくなるよねぇ……?
広いとはいえ、あの学園は隔離されているようなものだ。
中がどんなことになっているのかは知らない柚流には推測すらできないのだけど。
まぁ俺にとって朗報に越したことはなかった。
美味しいご飯が食べれるなら。
もちろん朔谷のおごりと言うのが前提だ。
「じゃぁそこでいいか……」
この、面倒くさいとどうでもよくなるクセはあんまりよくないよなぁ……
―――――
―――
“お~”
思わず感嘆の声が漏れる。
「お前……よくこんな人気の無い道知ってるな……」
「学園抜け出したとき……こう道知ってないと女の子に出会う可能性高いので……」
やっぱ抜け出してたのか……
真っ暗な細い通り道。
街灯の幅が広く、遠ざかると薄らとしか辺りが見えない。
確かにこんな道、男だろうと通ろうとは思えない。
「んで、おすすめの店は何処まで行ったらつくのかな?」
さっきから歩いてばかりだ。なのに、店らしい明るい雰囲気は全く感じられない。
この自信満々に限って道間違えたなんてことは無いと思うけど……不安だ……
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