1280人が本棚に入れています
本棚に追加
この五角形の中に刻まれたゴツイ『聖』の校章。
周りにゴチャゴチャした飾りも見えず、風格漂うそのロゴは、確かに目にしたことがある。
とりあえず、あんまり……こう、いいイメージじゃない気がするんだよなぁ……
そうこう考えてながら、柚流はあらあらしく靴を脱ぎ、玄関を抜けて一番奥のリビング部屋に進む。
普段は自分以外誰もいないリビングから、テレビの音が聞こえてくる。
まぁ、さすがに玄関に靴がある時点で、校長からのドッキリなワケないとは思ったけど……
心なしガッカリしている自分に、浅はかだと思い知らされた。
「しかも、なぜか俺は人生初の女装しているわけだ…」
いくらそんなに背が高くなくて、体があんまりガッシリしていないといったって、女装なんて理解できない。
つーか、俺。そんなに低いわけでも無いし。普通だし。
170あるからね?
179センチあるからね?
……………。
すみません盛りました。
172センチです。7センチ盛りました。でも170はあるんです……
自分で言ってて悲しい。
そんなことを思いつつガチャリとドアを開けると、一人の男がテレビの前にあるソファーに座っていた。
それもモデルのようなイケメンに、柚流は息を呑む。
柚流から位置的に見えるのは横顔だけだったが……充分だった。
少し長めの黒い前髪が、スッと通る鼻先にかかっている。
その間から覗く切れ長で垂れた目は、不思議なオーラを発しているのようで、吸い込まれそうだ……
耳には数個のリングピアスを付けていたが、チャラチャラした雰囲気などみじんも感じられなかった。
それよりも、妙な色気を纏っていて余計に見とれてしまう。
最初のコメントを投稿しよう!