†2 君の時間。

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「真希ちゃーん!ただいまー!」 突然だった。 突然、お姉ちゃんが帰ってきた。 短大を出て、就職を機にひとり暮らしをしていた姉の結衣ちゃん。 1年ぶりに実家に帰ってきた結衣ちゃんは… 「なっ…何入れてんの!? そのお腹っ!!」 「赤ちゃん。」 結衣ちゃんは、実に堂々と笑って言った。 赤ちゃん…って…。 「今ね、8ヶ月なの。 お産のために里帰り~。」 「はぁ!?」 大きな荷物と大きなお腹で帰ってきた結衣ちゃん。 当然、お父さんとお母さんには こっぴどく叱られて。 お父さんは悔しそうに目に涙を溜めていた。 相手の人をひた隠しにして、ひとりで育てると言い張った結衣ちゃん。 父親のいない子供を産んで育てる決心をした結衣ちゃんは、叱られている最中も、優しい顔つきで自分のお腹を撫でていた。 その姿がすごく印象的で。 …どんな気持ちで実家に帰ってきたんだろう。 高校生のあたしには、到底想像出来なかった。 あの、のんびりマイペースの結衣ちゃんが、シングルマザーなんて…。 大丈夫なんだろうか…。
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