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「まだ、父が隠蔽しているとは言い切れない。」
抑えていた感情を隠しきれなくなり、ミーシェの表情が強張る。
「ち、違います。
そんなつもりで言ったんじゃ…」
そこまで言いかけてクラダは口を閉ざす。
では、どんなつもりだ…と尋ねられた時に何も答えることが出来ないからだ。
「驚かせて済まなかった。」
クラダの怯えた様子をみて、心を落ち着けると自身の未熟を詫びる。
そして、呼吸を整えて自分が父へ向ける尊敬の念を口にする。
「だが、これだけは言える。
父は民のことを第一に考えている。
そんな父が理由もなく属性変換の技術を隠蔽する訳なんかあるはずがない。」
それを口にする様は、必死に自分に言い聞かせてるようで見てる方が辛くなる。
「も、勿論ですとも!
お義父さんの潔白を証明するために頑張ります!」
ミーシェを元気付けるためか、クラダはいつも以上の大声で再び分厚い本をめくり始める。
そんな彼を見て声にこそ出さなかったが、ミーシェは心で御礼を述べた。
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