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店主は所望された品を用意しようと踏み台へ上がると一番高い位置に掛けられているボードに向かって手を伸ばす。
ボードを取るために背を伸ばす一瞬の隙に合わせて、旅人は左手を持ち上げて二の腕をはだけさせる。
ローブに隠されていたのは、螺旋状に作られた黄金色の腕輪。
腕に巻きつく蛇のようにも見えるそれは不意に鈍く光を放ち始めてた。
「な、何をやっとん!?」
輝きが徐々に勢いを増して店主が気付いた時には、もう既に遅かった。
腕輪は形状を一本の黄金色の太刀に変えて店主へ襲いかかる。
それは決して比喩ではなく、本当に腕輪自体が太刀へと姿を変えて店主の二の腕を掠めたのだ。
「カスの割には上手く避けたじゃねーか!」
旅人の口から零れ出た言葉には、先程までと違い礼儀の欠片もない。
ドスの効いた声は相手を罵り、脅かす言葉の刃と呼ぶに相応しい。
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