始まりの夜

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「まったく……どうせこんな事だろうと思ってたわ」 ため息混じりにそうボヤきながら部屋に足を踏み入れてきたのは、長い髪をうなじ付近でまとめた女性だった。 水色のスーツをピシッと身に付けた女性は20代半ばといったところだろうか。 鼻筋の整った凛とした顔立ちに呆れの表情を浮かべながら、女性はつかつかと真っ直ぐにベッドへと近付いていく。 そしてそのまま躊躇う事なく事なく布団をガシッと両手で掴むと、一気に剥がしにかかった。 「うにゃっ!?ちょっ、ちょっと待ってって!ご、5分とは言わないけどせめてあと1分くらいは寝かせてくれてもーー」 「ダメ。そんな事言ってちょっとでも甘やかしたら貴女、10分でも1時間でも二度寝しようとするでしょ?」 懇願する声を一蹴し、必死に布団を掴む指をあっさり外して一切の慈悲も容赦もなくそれを引き剥がした。 布団が宙を舞うのと同時に、ベッドの中の人物ーー 可愛らしい猫の小さな顔が幾つもプリントされているパジャマを着崩して寝ていた少女に朝日の陽光が降り注ぐ。 「ぐっ、あっ、目がーーうあぁぁぁ!そ、そんな……どうして、こん……な?」 ガクガクと身体を震わせ、絶望に満ちた眼差しを女性に向ける少女。 しかしそれも僅かな間の事で、力尽きた少女はベッドの上に倒れ伏した。
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