始まりの夜

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その様子を腕組みをしながらしばらく眺めてから、片手で軽く髪をかき上げながら首を傾げた。 「……もう気はすんだかしら、裕子?」 女性の言葉に裕子と呼ばれた少女ーー天津裕子(あまつゆうこ)は、不満そうに唸りながらノロノロと身体を起こした。 眠気にしょぼしょぼとする目を手で擦りながら、裕子は女性を見上げる。 「ううー……いつも思うんだけどさ、もうちょっとくらいは反応くれてもいいんじゃないの?秋帆姉さん」 裕子の抗議に秋帆姉さんと呼ばれた女性ーー天津 秋帆(あまつあきほ)はやれやれと首を振り、肩をすくめた。 「いちいち貴女のリアクションにあった反応を考えてる程、私も暇じゃないのよ」 手に持っていた布団をぽいと裕子のベッドの脇へと放り、秋帆は踵を返す。 「とにかく、いつまでもバカやってないで早く着替えてご飯食べちゃいなさい?入学初日から遅刻だなんて、お母さんやお父さんに大目玉間違いなしよ?」 「や、ヤバっ!そう言えば今日から学校何だった!」 ベッドから慌てて跳ね起き、バタバタと身支度を始める裕子。 そんな彼女に苦笑しながら、秋帆はのんびりと部屋から出ていこうとする。 その前に秋帆は思い出したように首だけで裕子を振り返った。 「私もう会社行くけど、朝ごはん準備しといてあげるから。ちゃんと食べてから出るんだよ?」 「あ、ありがとね秋帆姉さんっ!」 今日の朝も天津家の朝はひどく騒がしくも、いつも通りの温かみが満ちていた。
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