Alice in nightmare

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今日二度目の工場への道を歩き出した。ただこの時、私は形容もできないような嫌な感情をなんとなく感じていた。何か、嫌な予感がしていた。 工場の明かりはすべてガス灯が担っていて、就業時間を過ぎた今はガスの節約の為に全ての明かりが切れていた。真っ暗闇の中に浮かび上がる、黒い工場のシルエットが、巨大なモンスターのように思えた。しかし通常ならば全ての扉に鍵が掛かり、戸締りの確認は全て工場の持ち主のライアンさんが行っている。考えてみればマリーが工場の中にいたとしても、ライアンさんが気が付いて外へと追い出してしまうはずだ。彼は子供を多く雇っているのに子供が大の嫌いで、遅刻した子の顔を殴ったり、少しでも口答えしたらクォータ(給料を4分の1にすること)をするぞと脅しをかけてくる。もちろん本当にクォータされてしまった子も頻繁にいて、その度に私たちはその子にお金を、私も厳しいから少しだけだけれど、渡していた。孤児院暮らしとはいっても当然タダで澄める訳ではなくて、働いてお金を稼いで、孤児院にお金を払わなくてはいけない。神父様たちだって無限にお金があって、無限に私たちを養えるわけがないからだ。 話が少し脱線してしまったけど、私はこれからどこにマリーを探しに行こうか悩み果てていた。もしかしたらすれ違いで孤児院に帰ったのかもしれない。とりあえずは戻るしかないと思った私は踵を返そうとした。しかし私の足は、工場の奥から聞こえてきた、何かを打ち付けるような甲高い音を聞いて止まる。中に誰かいるのだろうか。私は試しにと恐る恐る扉のノブに手をかけると、ガチャリとそのまま押し開くことができた。どうやら鍵がかかっておらず、中に誰かがいるようだった。それともライアンさんが鍵を閉め忘れただけだろうか。どちらにせよ、暗い工場の中で独りぼっちかもしれないマリーの事を想って、中へと足を踏み入れていった。
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