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駅に向かうショッピングモールを抜け、信号を待っているとポケットで携帯が震える。
薄いピンクのケースに収まったiPhoneを取り出せば、電話の着信を告げる画面にハートマークと悠一の名前が踊っている。
出てなんかやらない。
一回目で出てやるほど私の心は広くないぞ、とか思いながらまだ振動を続ける携帯をポケットに戻して、青に変わった横断歩道を渡る。
「あれ?金子さん?」
声をかけられて振り返るとスーツの上にグレーのコートを羽織った男性が駆け寄ってくる。
「あ、どうも…」
…誰だっけ。
当たり障りなく会釈を返すと男は苦笑して言葉を継いだ。
「あー、その顔は忘れてる顔でしょ。野崎だよ、野崎一哉。昨日会社で会ったよね?」
「あ、野崎さん!すみません…」
サキは野崎の顔を思い出して恥ずかしそうに謝る。
「許さない…なーんてね、いいよ、思い出してくれたしね」
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