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「ああ、もう食べられない。」 「ああ、もう入らない。」 駅のホームで、私は丼ものをかきこんでいた。 「七味をかけて、味を変えよう。」 橙色のキャップを回して、牛丼にバサバサとかける。 そうこうするうちに、電車が行ってしまった。 「あっ……」 そんな、と悲しくなって、ホームの階段に丼を捨てて、トボトボとそのまま駅を後にした。 商店街は活気に溢れている。今日はなにか祭りがあるようで、山車の上に乗りながら人々の頭を眺めた。 あっ、あそこには禿げ頭。そうして偽頭。 「よっ、電球、活きがいいから買っていきなよ」 と、アルバイトの店員がさしだしたのは、青紫色に、レモンイエローの斑点がまぶしい皮膚のアンコウだった。 「それより、しらすが欲しい。」 「しらすは無いよ。その代わりに、生きたままこいつを焼くから、食べていきなよ。」 店員は突然、店へ駆け込んだ。そうして、店の奥に置いてあった、焼きそばを焼くときに使うくらいの大きな鉄板でもって、アジを焼き始めた。 アジは発泡スチロールの箱から取り出されて焼かれていった。 鉄板の上で、アジがバタバタと元気に跳ねる。そうして白い蒸気がいい香りの煙に変わる頃に、完全に動かなくなった。 「うまそうだろう。」 アジは食べなかった。
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