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棟を出る頃、雨はすっかりと止んで、地面も乾いていた。しかし寒さは増したようだった。 「わたし、帰る」 美少女はそう言って、追い付けない早さで走って行ってしまった。 焦った私が男を見ると、にんまりと笑って、 「よかったよかった」 と言った。 何がよかったのかさっぱりわからないが、まあ、よかったものは良いのだろう。よかった。 「おれも帰る。ついでに行こう。」 と腕を引かれた先は、棟の屋上で、「エッ」と声をあげると山車になっていた。景色も、商店街に変わっていた。 私と男は、山車の上から人々の頭を眺めた。 茶髪の女が多いな、と思った。 山車に引かれて、お囃子の音も心地よく、人の波をかき分けて進む。 一定の距離を保って並ぶ提灯の遠近感が不思議で、ぼんやり眺めている間に家の前に着いた。 そうしていつの間にか山車から降りていた。 まだ地に足がついていない感覚だ。 ふらふらと家の玄関までたどり着くと、鰐が数匹、こちらを向いて口を開けていた。
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