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『お前も言うようになったな』
「ん?……何だよ」
何時もの呆れ顔で苦笑する瑠一は、後ろからホールドするように俺の腕をスルスルと撫で洗う。
うっとり目を閉じて、腕を上下に行き来する掌の感触を意識下で追っていたオレは、
瑠一の言う『言うようになった』が何を指しているのか気になって、覚醒するように瞼をゆっくり開いた。
「それ、何時の何と比べてんだよ」
『お前が初めて俺に洗われた日だ』
「…………っ、だって、あの時は!」
勢いよく振り返ってしまったから、瑠一の手は咄嗟の事に軽く万歳状態に。
瑠一の言う「あの日あの時」は、オレにとって青天の霹靂のようなもので……
目が覚めたら知らない家の風呂場で、知らない奴がオレを中途半端に脱がせてシャワーかけてたんだから……。
(キョドるだろ……普通は!)
『あの時よりも、だいぶん噛みつかなくなったよな……』
「オッサンはあの頃から無駄にエロかったよな?」
余りにも変わったと煩いから、意趣返しのつもりだった。
だけど、その台詞で瑠一にスイッチを入れてしまったらしい。
さっきまでマッサージみたいだった手付きが、明らかに変わった。
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