prologue

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事の始まりは、類ねぇの言った一言。 ―― 出産したら暫くは行けないかもね…… 双子を妊娠中の類ねぇは、ナントカ早産という危険性が高まって、先月半ばから入院中。 本人は至って元気なのに何がどう危険なのか、話を聞いてもオレにはピンとこなかった。 ワカったのは、今生まれたらいけないって事。 二人の赤ん坊が、一日でも長く類ねぇのお腹ん中に居ることが大事らしい。 それでガッコが休みの今日、瑠一と連れ立って何度目かの見舞いに来たんだ。 「類ねぇ、何処か行きたいとこ有ったの?」 「えぇ、佐賀にね」 類ねぇは懐かしそうに、でも、どこか残念そうに眉を下げる。 (佐賀……行ったこと無いな……) 「何かあるの?佐賀に」 「有るわ……祖父母と両親のお墓がね」 その時初めて知った。 類ねぇは、九州人だったという事を。 そして思い出した。 類ねぇは、碧兄ちゃんに嫁ぐまで家族が居ない身だった事を。 「類ねぇの、じいちゃん達の……」 「えぇ、みんな其処に眠ってるわ」 類ねぇはそう言って、閉められた窓の外に視線をやった。 故郷の景色なんか見える筈がないのに、まるで其処に見えているかの様に目を細めて。 .
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