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なんとかなく、悲しくなってしまった。
――独りってどんななんだろう。
オレには両親が居て兄ちゃんがいて、今では瑠一も居る。
独りぼっち……もしそうなったら、オレはちゃんと生きていけるのだろうか。
窓の外ばかり見ている類ねぇに、オレは何か言ってやりたくて……。
「っ、だったらっ!……赤ん坊産んで、元気になったら行けば良いじゃん!」
「ふふ……そうね、実はお墓参りだけじゃないの、佐賀に行きたかった理由は。」
「……?」
気の利いた台詞の一つも言えないオレに、類ねぇはそう言った。
しかも、悪戯っ子の様に肩を震わせて笑っている。
「え?……墓参りに行けないって落ち込んでんじゃねぇの?」
「やぁね、落ち込んだりなんかしないわ! 今の私には血の繋がりよりも深く、愛してくれる家族が居るもの……」
―― あなた達2人も、その家族の一部でしょう?
枕元に立っていたオレの手に、類ねぇの柔らかい手が重なった。
子供を望めない男同士のカップルのオレ達にとって、【家族】という言葉は存外に重要で意味のある言葉。
それを敢えて「あなた達も」と言った類ねぇの優しさに、思わず胸の真ん中辺りがキュウッとなった。
「類ねぇ、大好きだっ!」
「うん、私も藍君大好き!」
後ろで兄ちゃんと瑠一が呆れたように苦笑いしているとも知らず、オレは類ねぇの肩に抱きついた。
勿論、躯に障らない様に気をつけながら。
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