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『それで?類、佐賀に行きたかったもう一つの理由ってのは何なんだ』
「っあ、ちょっ……瑠一っ」
瑠一は抗議の声を丸無視して類ねぇから引き剥がすと、オレも気になっていた事を尋ねた。
「お祭りがあるの。正確には神社の秋期例大祭。」
「例大祭?」
「えぇ、そう。唐津くんちよ」
類ねぇは、子供みたいに瞳をキラキラさせて言った。
でも直ぐに輝きは曇ってしまう。
「碧君も連れて行きたかったのに……ホントに凄いのよ?最終日なんて貰い泣きする位に感動的なんだから!」
「類さん……」
「一昨年までは毎年必ず行ってたの。法事を兼ねて有給をとって……おくんちに行かないと冬が来ない気がしてね」
説明するうちに、その【唐津くんち】というお祭りを思い出して、類ねぇはとうとう泣き出してしまった。
『おいおい、祭りに行けない位で何も泣かなくったっていいだろうが』
「ぅ……だって……去年も行けなかったのよ?……はぁ……もぉ、ヤになっちゃう……」
笑ったり泣いたり……感情の起伏が激しい。
そんな類ねぇの状態は、病室に入る前に玄関ホールで出迎えてくれた碧兄ちゃんに聞いていた。
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