3/12
前へ
/277ページ
次へ
電車は走り続け、途中、日本三大松原らしい【虹ノ松原】を横切る。 踏切で待っていた高校生と、目があった気がした。 ―― 素朴な感じだな、人も、家も…… 流れる景色に目が疲れて、チョットのつもりで目を閉じた。 次にオレが目を開けたのは、腕を引く瑠一に起こされたから。 寝てたのか……と、欠伸を一つしてステップから降りる。 肩越しに振り返って向き直り、オレは相手をしてくれたおばあちゃんに手を振った。 電車は、もう一つ先にある終点の駅までおばあちゃんを運ぶそうだ。 高架になっているホームから、駅構内へ。 すれ違う女子高生が、数人固まったままだったのが笑えた。 瑠一は相変わらず目立つ。 でも、生憎この長身の獣はオレんだ。 「いよぉし、着いた!……唐津だ!!」 『あぁ、空港からがチョットかかったな』 駅舎を出て予約した旅館へ。 この時期、かなり前から予約しとかないと厳しいと類ねぇから聞いていた。 案の定、ホテルも何処も予約で一杯。 ところが、駅から海に向かってタクシーで数分の旅館でキャンセルが出たのだ。 「しっかし良かったな、泊まるとこ見付かって!」 『あぁ、楽しみだ』 「祭りが……だよな?」 『あぁ、それも楽しみだな。』 「夕食が……だよな?」 『あぁ、それも楽しみだな』 「まさか…………畳に布団か?」 『あぁ、それが一番楽しみだな』 昨夜、宿泊する部屋の様式が和室だと判明したことで、 オレとはまた違う意味合いで、瑠一のテンションが上がったらしい。
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3320人が本棚に入れています
本棚に追加