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「これからの旅はこんな感動が何度も続くと思え。そうすりゃ、生きることも旅することも楽しみで仕方がなくなるからよ」
今、現在、その瞬間を満喫しているであろうカラスが核心を含んだ声色でスネアに語りかける。
「そこまで言うんだったら、ちょっとくらい期待してやろうかね」
カラスの言葉をそのまま受け取ることが少々癪(しゃく)だったため、スネアはちょっとだけ捻って返す。「素直じゃねぇなぁ」と笑いながら肩を組もうとしてくる男の腕を、スネアはもう一度すり抜けた。
二人のやり取りを見てライドも両足を肩幅まで広げ、大きく上半身を反らす。
「わああぁぁぁ……おろろろろろろろ」
叫ぼうとした瞬間、代わりに何か出た――吐瀉物(としゃぶつ)である。まるで滝のように衰えを知らないゲロの勢いにカラスとスネアは二人して大きく怯み、やっと収まったライドに慌てて水を腹いっぱいに飲ませる。
スネアにとっては旅の初日――さらには門出をとんでもないもので締めくくられてしまい、これからの旅に対して不安が山積されたことは言うまでもない。
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