浜口陽子の場合

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土曜日の夜。 白いワンピースに身を包み、陽子は部屋を出た。 本当は正和とデートの予定だったが、仕事の都合では仕方ない。 日曜日が正和の誕生日だったので一緒にプレゼントを買いに行く予定だったが、陽子は一人で百貨店に向かった。 文房具売場で万年筆を購入し、ラッピングをしてもらう。 それを渡した時の正和の笑顔を想像しながら店を出ようとした時、陽子の携帯が鳴った。 正和だった。 「どうしたの?」 陽子が電話に出る。 「やあ、今日はごめん。」 「仕方ないじゃない、仕事なんだから!」 「うん・・・。」 電話の向こうの正和が口ごもる。 「どうしたの?」 不安になって陽子が尋ねる。 「ごめん。取引先のお父様が亡くなられて、明日お通夜になっちゃったんだ・・・。」 「え・・・。」 「だから、明日はそっちに行かなきゃいけなくなった・・・。」 「・・・誕生日なのに・・・。」 「ホントにごめん・・・。」 電話の向こうの正和が申し訳なさそうにする様子が感じ取れた。 「うん。仕方ないよね。」 「ごめん。そのうち埋め合わせするから!」 「うん。じゃあね。」 そう言って電話を切った。 陽子は取引先のお父様を少し呪った。
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