あなたのために

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「ふぅ…」 「どうした?」 会社を出てクリスマスムードに包まれた駅までの歩道を並んで歩きながら、雪乃は洋介の腕にとんっと頭を寄せた。 指を絡ませて繋いだ手は洋介のコートのポケットの中にある。 「まゆちゃん、少し不安になってたみたいで…良かったなって。」 「ああ、鳥海も同じだよ。アイツの方が焦ってたかもしれない。河野さんが受付になってから特に。」 「そうなんですね。そういえば今日も声かけられてました。まゆちゃん可愛いから。」 洋介は特に返事をせずに、ポケットの中の組んだ親指で雪乃の親指の背を数回撫でた。 「で、でもビックリしました、花束。」 「そうだな。でもあそこで目立つ事をしたのは、…多分わざとだと思うよ。」 雪乃が洋介を見上げる。 「わざと?」 「ん。…前に雪乃が会社で熱出して俺が送って行った事があっただろ?俺が名前呼んだりして、付き合ってるって知られて。」 「あ、はい。」 「雪乃はその後休んでたからあまり実感ないかもしれないけど、俺は驚いたよ。話の広まるスピードに。」 思い出したのか洋介が苦笑する。 「多分鳥海は、河野さんは俺の彼女だぞ、って、他の男を牽制したいんだと思う。明日中には広まるだろうから。」 ・
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