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「ありがとう、洋介さん。」
向かい合って座るレストランの席は窓際で、街の灯りが冴えた空気にキラキラと光って見える。
「いつも美味しいご飯作ってくれるから、そのお礼。」
洋介はそう言うが、歩美によると、この辺りで美味しいと評判のこの店のイブの予約を取るにはかなり前にしなければダメらしい。
もしかしたら結婚式より前だったかもしれないのに、予約してあるのを雪乃が知らされたのはついこの間だった。
「それは当たり前の事だから…。私の方こそ、ありがとう、いつも。」
「何に?」
「…全部に?」
「はは、何だそれ。」
明日も仕事だからとグラスで頼んだワインがテーブルに置かれる。
「乾杯しようか?」
頷いた雪乃は少し緊張している手でワイングラスを持ち上げて「何に?」と首を傾げて聞いた。
「…こうして一緒にいられる事に。」
洋介の優しい眼差しに雪乃は笑顔を返す。
感謝と愛に溢れるこの夜に、幸せを祈っていいのなら。
「…乾杯。」
貴方のために。
貴女のために。
「メリークリスマス」
おわり。
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