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「吉野」
「えり子さん」
ニヤニヤと笑いながらこちらを見る二人に、雪乃は頬を赤くした。
「あ、えり子さんはこれからですか?」
「そうなの、澤田さんみたいなイケメンがいればいいんだけど。」
「フフ、えり子さん、ホントは好み違いますよね?」
「あ、バレてた?」
楽しそうな雪乃とえり子の会話を聞きながら、洋介は「?」という顔だ。
「でも、吉野さんと一緒、なんですか?」
「あ~、この人も彼女いない歴長いみたいだから誘ったのよ。今日も誘い全部断ったんだってさ。勿体無いわよね?」
「…山口さん、もう勘弁して。」
「アハ、ごめんなさい。今日は優しい感じの子も誘ってあるらしいから。お互い頑張りましょ?」
「…はいはい。」
「じゃ、行くわね。お二人も良いイブの夜をね。って、新婚さんには余計な事か?」
「もうっ、えり子さんたら…。いってらっしゃい。」
「じゃあな、澤田。」
「あ、ああ…」
軽く手を上げ頷きながらも、訳が分からないという顔の洋介を見てまた雪乃が笑う。
「クリスマスパーティーという名の合コンだそうです。彼氏・彼女がいない人限定で。」
「合コンか…。」
何か話しながら玄関の自動ドアを出て行く二人は仲が良さそうに見える。
「雪乃、合コンって男女連れ立って行くもの…?」
「…普通はあまり無いかな?」
「だよな。…あ、ごめん、俺、取りあえず課に行ってくるよ。」
洋介は「待ってて。」と雪乃の頬を長い指ですっと撫でると、急ぎ足でエレベーターの方に向かって歩いて行った。
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