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仕事の終わる時間がなかなか合わない雪乃と洋介は、いつもはほとんど別々に帰宅している。
けれど、クリスマスイブの今日は洋介に誘われて食事に行くことになっていて、ここ玄関ロビーで待ち合わせをしていた。
洋介の指が触れて熱くなった頬に手の平を当てて「もう…」と呟きながら、雪乃は受付カウンターにいるまゆに目を向けた。
丁度来客が帰る所のようで丁寧にお見送りをしていたが、来客の1人が引き返してまゆに何か話しかけている。
「あら…。」
…鳥海さんが心配するの分かるな、と見ていると、まゆは笑顔を作りながらもしっかりと断ったのだろう、その人に向かって頭を下げた。
「お疲れ様。」
まゆだけになったカウンターに近付きながら雪乃が声をかける。
「先輩。」
「まだ終わらないの?」
「いいえ、今最後のお客様が帰られたので、7時で上がれそうです。先輩は澤田さん待ちですね。さっきチラッと見ちゃいましたよ。」
そう言いながら自分の頬をチョンと触ってまゆが笑う。
「澤田さんて、先輩といる時ってホント雰囲気変わりますよね。甘すぎです。」
「そんな事、…あるか、も?」
照れた雪乃は慌てて話題を変える。
「そういえば、城島さんは?」
「由佳里さんなら、少し前に上がりました。」
呼び方からまゆと由佳里が親しくなった様子が感じられて、雪乃は嬉しく思う。
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