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「それが実は…あ、」
何か言いかけたまゆが言葉を切って、エレベーターの方を見たので雪乃もそれに倣う。
「城島さん。」
ロッカーで私服に着替えて下りてきた由佳里は、いつも以上にお洒落で綺麗だった。
そして、そのすぐ隣を歩いているのは澤田の後輩 の山崎だ。
雪乃がまゆに「そうなの?」と視線を送ると、まゆがにっこりと肯く。
由佳里と山崎が受付の前で足を止める。
由佳里は雪乃に気付いて笑顔で会釈をすると、まゆに話しかけた。
「お先にごめんなさいね、まゆちゃん。お客様は帰られた?」
「はい、先程。」
「そう。じゃ7時には上がってね。」
「はい、わかりました。」
「あ、永山、じゃなかった、澤田さん。先輩もうすぐ来ると思うよ。」
「あ、はい、ありがと。」
雪乃に声をかけた山崎は、「じゃ、行こうか。」と由佳里を促して歩き出す。
「お疲れ様でした。」
由佳里がまゆの声に笑顔で応じている隙に、山崎が雪乃を見て親指をグッと立てた。
その嬉しそうな顔に雪乃の口元も綻ぶ。
「…何だかみんな幸せそう。」
由佳里と山崎を見送りながら、まゆがポツリと呟いた。
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