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「え?まゆちゃんも鳥海さんと約束してるんでしょ?」
「はい、そうなんですけど…」
はぁ…と、まゆがため息をつく。
「鳥海さん、最近、話をしてても上の空の事が多いんです。今日も少し残業になるって伝えたら、自分もちょっと用事あるから、ってさっき外に行っちゃって…。」
不安そうに目線を落とすまゆの背中に雪乃はそっと触れて言った。
「大丈夫。鳥海さんはまゆちゃんの事、大事に考えてると思う。」
日頃、まゆが可愛くて仕方ない鳥海から惚気話を聞かされている雪乃やえり子は二人の心配は特にしていない。
けれど、まゆにしてみれば、総務課にいる時のように一緒に居られない事が不安に拍車をかけてしまうのかもしれない、と雪乃は思う。
…それにしても、鳥海さん、どこに行ったんだろう?
そう思いながら雪乃が腕時計を見ると、そろそろ7時になるところだ。
そこに、受付カウンターの隅に置いてあったまゆのスマホが震えて音を出した。
「…電話、鳥海さんです。」
手に取って表示を見たまゆは雪乃に告げると、口元を隠しながらカウンターの陰にしゃがみこんだ。
「もしもし…はい…」
すぐに電話は終わって、立ち上がったまゆはさっきより明るい顔になっている。
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